昨年夏、ロバート・J・ソウヤーの Hybrids を読み始めたことを書いたが、その後邦訳が出て、それも買った。すぐにでも読みたかったがなかなか手にとる時間が作れず、最近ようやく読み終えることができた。
前の記事でも少し書いたように、この作品にはいろんな問題や素材が詰め込まれている。
その中でも宗教が重要なウエイトを占めているのは、疑いない。というのも、ネアンデルタール人の末裔が高度な文明を築いている並行宇宙には、宗教に相当するものが、観念としても、身体的な経験としても、社会集団としてもいっさい存在しないということになっている。物語では他にもいろいろな差異が浮かび上がってくるのだが、あり/なし、という形でこれほど明確な対比を打ち出しているのは他にないからだ。
ネアンデルタール人のポンターと、主人公のメアリとの間で交わされる、宗教の必要性や「害悪」をめぐるやりとりはとても示唆的だ。問題を単純化しすぎているとか、宗教のとらえ方がキリスト教 (ローマ・カトリック) 寄りであるといったことはあまり気にならない。
そう感じさせるのは、学者としてのポンターの姿勢によるところが大きいと思う。彼は、未知のことがらに対してとても謙虚に問い、学んだうえで、自分の見解を表明しようとする。
そういう姿勢に自分もいつのまにか気持ちよくシンクロしていって、物語上の設定になっていることに拘泥するより、あとは自分の現実のなかで考えようという気にさせられるからではないだろうか。
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